2006-01-01から1年間の記事一覧

『昭和の動乱』重光葵著

昭和の動乱 上重光 葵著外交の第一線にあった著者が、満洲事変から日本の降伏までを記している。日本だけでなく、シナ、アメリカ、欧州の動向も含めて詳細かつ幅広く、それでいてコンパクトにまとめられており、読みやすく問題意識も深まる一冊である。 日本…

『「戦争責任」論の真実』牛村圭著

「戦争責任」論の真実牛村 圭著保阪正康氏は著書『あの戦争は何だったのか』の前書きで、「侵略の歴史を前提にしろ」「自虐史観で語るな」といった感情論だけで見ず、歴史をきちんと確認せよ、といった趣旨のことを述べている。私はまさにそのとおりだと思っ…

『地ひらく』福田和也著 文春文庫

地ひらく 上福田 和也著石原莞爾の生涯を詳細に描くとともに、日露戦争から敗戦までの道のりを、日本の政治・軍事・経済はもちろん、欧米・中国の動向もあわせて詳細に描く。日本が侵略国家と一方的に断罪するのでもなく、逆にアメリカに手玉に取られた被害…

『陸軍省軍務局と日米開戦』保阪正康著

陸軍省軍務局と日米開戦保阪 正康著東条内閣成立から対米英開戦に至る2ヵ月間、陸軍の政治的中枢である軍務局軍務課の石井秋穂らが中心となって和平への道を探り、そして挫折するまでを描く迫真のドキュメントである。東条は組閣にあたり天皇から「広く深く…

「昭和史 戦後篇」半藤一利著

昭和史 戦後篇半藤 一利著著者の深い知識と軽妙な語り口で、1945年以降の昭和史を分かりやすくまとめている。1945年までが対象であった前作に勝るとも劣らない好著である。 これからの日本を「ひたすら世界平和のために献身する国際協調的な非軍事国…

『中国の歴史08疾駆する草原の征服者』杉山正明著

中国の歴史 08礪波 護〔ほか〕編集委員唐時代の安史の乱からモンゴル帝国が中国本土を失陥するまでの激動の600年を、中華思想(及びそれと対をなす夷狄という概念)から自由な著者が、ユーラシア全体の視点で描く。 大王朝のイメージが強い唐は、建国初…

『モンゴル帝国の興亡 上下』杉山正明著 講談社現代新書

モンゴル帝国の興亡 上杉山 正明著現在、日経新聞には堺屋太一氏の小説「世界を創った男 チンギスハン」が連載されている。堺屋氏は文藝春秋06年3月号で「(フビライハンの時代から数十年間の)モンゴル帝国こそ無限の世界帝国であり、歴史上、現代の米国…

『キメラ』著 山室信一 中公新書

キメラ山室 信一著著者が本書を表す30年前、竹内好氏の「日本国家は満州国の葬式を出していない。口をぬぐって知らん顔をしている。これは歴史および理性に対する背信行為だ。」という言葉を聞き、満洲国とは何であったかという問いに一生かけて答えねばな…

『柔道ストラテジー』ディビッド・ヨフィー、メアリー・クワック著

柔道ストラテジー作者: デイビッド・ヨフィー,メアリー・クワック,藤井正嗣出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2004/08/27メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る「柔道ストラテジー」と言えば、その名からおおよそ見当がつくとおり…

『脳を鍛える』立花隆著 新潮文庫

脳を鍛える立花 隆著 著者が東大教養学部で96年に行った講義をまとめたもので、その第一巻という位置づけである。シラバスには「人間はどこからきて、どこに行こうとしているのか。マクロに見た人間史の総括。自然の中の人間の位置づけ。エコロジーとエコ…

『精神と物質』立花隆・利根川進著 文春文庫

精神と物質立花 隆著 / 利根川 進著 一言感想を言うと、「無茶苦茶おもしろい本」である。 利根川氏が大学を卒業し、渡米(のちにスイスに渡る)し大学・研究所を渡り歩いて研究を進めつつ、ノーベル生理学医学賞を受賞することになる「抗体の多様性生成の遺…

『働くということ』黒井千次著 講談社現代新書

働くということ黒井 千次著 著者は、15年間メーカーに勤務した後、文筆生活に入った方である。本書は、前半が著者のメーカーでの勤務体験、後半が様々な本や著者の分析・思索を通じ、働くことの意味を問いかける。初版が82年3月で、私が手にしているの…

『ソ連が満洲に侵攻した夏』半藤一利著/『コーランを知っていますか

ソ連が満洲に侵攻した夏半藤 一利著敗戦直前に、突如ソ連が満洲に侵攻し、8月15日以降も攻撃の手を緩めず、兵士・一般市民に対してを問わず略奪・暴行の限りを尽くし、無数の日本人をシベリアに連れ去り抑留するに至ったドキュメンタリーである。国際法に…

『ローマ人の物語XIV キリストの勝利』塩野七生著 新潮社

ローマ人の物語 14塩野 七生著 本シリーズも本巻を含め、いよいよ2巻を残すのみとなった。誠に寂しい限りである。本巻は、大帝と呼ばれたコンスタンティヌスの死直後から、これまた大帝と呼ばれたテオドシウスが死し、帝国が東西に分裂するまでを描いてい…

「ノモンハンの夏」半藤一利著 文春文庫

ノモンハンの夏半藤 一利著 1939年に勃発したノモンハン事件、すなわち満洲・モンゴル国境で日ソ軍が激突し、日本軍の一個師団が壊滅するに至った激闘を克明に描くドキュメンタリーである。ヒトラー・スターリンや日本の政府上層部の動きを背景として描…