『モンゴル帝国の興亡 上下』杉山正明著 講談社現代新書
杉山 正明著
また、日本・朝鮮・中国・中東・ヨーロッパと、まさに世界に影響を与えたことがよく分かる。その中でも、著者がいわゆる中華思想から自由であることは、歴史を世界規模で見せることに役立つ。「(大都の失陥によって)中国史では元朝滅亡と言う。そして、少なくとも中国本土では、明朝が揺るぎなく確立したかのように言われがちである。だが、それは中国伝統の王朝史観の産物にすぎない。・・・これ以後およそ20年間、北の大元ウルス(=いわゆる元朝)と南の大明政権とは、華北を間において拮抗状態となった。」といった記述がそこかしこにあり、誠に分かりやすい。だからこそだが、明朝との興亡や清朝との関わりといった、モンゴルが中国本土を失って以降の記述があまりにあっさりしているのが誠に残念でならない。続編を是非とも読みたいと思う。