「昭和史 戦後篇」半藤一利著

昭和史 戦後篇
半藤 一利著
著者の深い知識と軽妙な語り口で、1945年以降の昭和史を分かりやすくまとめている。1945年までが対象であった前作に勝るとも劣らない好著である。
これからの日本を「ひたすら世界平和のために献身する国際協調的な非軍事国家」でいくのか、「平和主義の不決断と惰弱を清算して、責任ある主体」となり「普通の国」になるのかは、「若い皆さん方の大仕事」と著者は終章で問いかける。誠に重い課題である。
当然だが東京裁判に関しても一章を割いている。アメリカは、昭和天皇を訴追しない方針であり、陸軍の軍政方面を中心に罪を問うストーリーを組み立てており、結果そのとおりの判決となったことが描かれている。東条英機の証言内容が天皇の責任があることを示す恐れが出てきた際、キーナン首席検事がうまく東条を誘導したことや、裁判が終結天皇の責任が問われないことが確定した後、キーナンは若槻礼次郎らに慰労されたことが記されている。こういう背景があるので、真面目に言えば、事後法で裁いたとか、論理の通っていない判決ということになるし、著者流に不真面目に言えば単なる「茶番」ということになる。東京裁判は法律問題である一方、むしろ政治の問題であることを痛感した。このあたり保坂正康氏の「昭和史七つの謎」と同じ論理展開であるが、あわせて読むと理解が深まる。
この他にも、日本国憲法朝鮮戦争日米安保等、様々なトピックが分かりやすく記されている。これからの日本の進むべき道を考える上で、必読の書と言えるだろう。