「ノモンハンの夏」半藤一利著 文春文庫

ノモンハンの夏
半藤 一利著
 
1939年に勃発したノモンハン事件、すなわち満洲モンゴル国境で日ソ軍が激突し、日本軍の一個師団が壊滅するに至った激闘を克明に描くドキュメンタリーである。ヒトラースターリンや日本の政府上層部の動きを背景として描きつつ、関東軍参謀が情勢を過度に楽観視し(というかほとんど状況調査をせず)、かついい加減な作戦をたて、そして東京の参謀本部は毅然とした態度を全くとらず、関東軍の暴走を許し、結果として無数の将兵の命が失われるに至った悲劇が、余すところなく描かれている。非常に読みごたえがある反面、軍エリートのあまりにも情けない対応がリアルに描写されていて、読むに耐えない思いで一杯になった。著者も怒りにおさえきれないようで、その思いが文面からひしひしと伝わってくる。戦後60年、日本の過ちの原因を探るためには、必読の書であると思う。