『ローマ人の物語XIV キリストの勝利』塩野七生著 新潮社
塩野 七生著
著者はキリスト教を大変嫌っているようである。あるいは多様性を愛し排他性を嫌っていると言った方が正確かもしれない。正直言って本巻の最初の1/3は、文章に力がこもっておらず、著者も手を抜いているかと思ったが、ユリアヌス帝の章になると、文章がとても活き活きしてきて、引き込まれていった。キリスト教中興の祖とでも言える司教アンブロシウスの章についても、ローマのよさが失われていくことが鮮やかに描かれているという点で、これまた文章に引き込まれていく。そして最終巻で蛮族に帝国が乗っ取られることが暗示されている。次巻を早く読みたくて待ち遠しい一方、最終巻となるのは大変残念であり、すこぶる複雑な心境である。