ロナルド・H・コース『企業・市場・法』

 

企業・市場・法 (ちくま学芸文庫)

企業・市場・法 (ちくま学芸文庫)

 
取引費用という概念を導入することで、
企業・組織の成立理由を論じた「企業の本質」、
法制度の効果を論じた「社会的費用の問題」を含め、
名論文をまとめた本である。
 
本書に含まれている論文の中で、私にとってインパクトがあったのは、
「経済学のなかの灯台」である。
 
灯台は、ミル、サミュエルソン等が、
私企業が料金を徴収できない、あるいは社会的に最適である、
という理由で、政府が税金を財源に運用する例としてあげている。
 
しかし、コースは、イギリスで灯台が建設・管理されてきた
歴史をコンパクトに説明する。
まずは利潤をもとめる冒険的私人によって建設された。
その後、様々な経緯を経て、
トリニティ・ハウスと呼ばれる公的機関は管理するに至る。
しかし、当論文執筆時点でも、財源は、
港湾を利用する船舶から徴収する利用料なのである!
 
いかに、現実から遊離した学問が、
コースの用語によれば「黒板経済学」が、
無意味であるか、よく理解できる。
私自身、会社で何か施策を立案・実行する際、
現場から遊離しないよう、十分に気を付けたいと、改めて思った。