「日本の雇用と中高年」濱口桂一郎著

本書に趣旨をまとめると、以下のとおりか。「日本型雇用システムは、若者に有利で中高年に厳しい。50年前はこのことが政策課題として認識され、ジョブ型(職務給)への移行が叫ばれていた。しかし現実には各企業は職能給型になっていった。その後知的熟練論がその状況を理論武装したが、実は現実を冷静に見る企業によって、中高年リストラが進行した。なので、中高年以降はジョブ型とすべきであり、高賃金でまかなっていた育児・教育費用は社会が負担すべき。」
まさにこのとおりと思う。しかし、著者の主張どおりに事を進めるには、企業の人事制度を変えるのみならず、教育・社会制度等、日本全体が抜本的に変わる必要があり、それは容易ではないだろう。また、「中高年以降」だけジョブ型にするなんて、都合のよいことができるかも不安だ。
ちなみに、最近求められている「女性活躍促進」は、ライフイベントでキャリア(育成)が中断しても活躍を目指すという点で、日本型雇用システムへの最後の一撃になると考える。著者の言うように進めていかないといけない時代かもしれない。