「働かないオジサンの給料はなぜ高いのか」楠木新著

働かないオジサンの給料はなぜ高いのか: 人事評価の真実 (新潮新書)

働かないオジサンの給料はなぜ高いのか: 人事評価の真実 (新潮新書)

日本の雇用制度の中で、成果の高くない中高年の処遇はなぜ高いかを述べる。しかし、私はむしろ本書に、一般の人事労務関連書とは異なる、個人としての生き方を真剣に考えるべきというメッセージを読み取った。
日本の会社はメンバーシップ型であり、「同期」が仲間意識と競争意識を醸成するが、ポスト不足により、ピラミッドから押し出された人が働かないオジサンになると言う。「1年間の無給の道草休暇」「キャリアダウン制度」の導入も提案されているが、もしかすると有効かもしれないと思った。
しかし、本書で最も心に残ったのが、「典型的なサラリーマンとバリバリの芸人(アラン注:フリーランサーの意と理解)との間には、数多くの目盛が刻まれている」というフレーズである。著者は、自分のやりたいこと(キャリアチェンジ者へのインタビュー、修士論文の完成等)をやる遂げるため、役職復帰を断ったエピソードを紹介している。本書読了後、思わず以下の本を買って、速攻で読んだ。

会社が嫌いになっても大丈夫(日経ビジネス人文庫)

会社が嫌いになっても大丈夫(日経ビジネス人文庫)

本書では、著者が、うつによる3回の休復職を繰り返し、今の考え方・働き方・生き方に至ったプロセスが、切々と語られている。本書全体から迫力を感じた。

「うつ」が治るというのは、元に戻ることではなくて「自分の心構えを切り替えること」「新しい生き方を探すこと」だというのが実感である。逆に言えば、切り替えのないかぎり、本来の治癒はありえないような気がする。

日経ビジネスの昨年7月7日号の藤原和博氏の記事に、以下記載があったのを思い出した。

・30歳でメニエール病にかかった。そこで出世コースから降りて、専門職へと方向を転換した。
西部邁氏は、男が正気に戻れるのは、大病を患うか、独房に入れられるか、戦争に生かされる時だけだと述べています。

楠木新氏の2つの本を読むことで、企業の実態の分析よりも、その生き方に強い関心を持つとともに、パワーを頂いた次第である。