近代への準備としての江戸時代
- 作者: 大津透,桜井英治,藤井讓治,吉田裕,李成市
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/03/28
- メディア: 単行本
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第2章 岩崎奈緒子氏の「世界認識の転換」では、江戸時代は鎖国で世界のことを何も見ていなかった、などということはないことを示す。山村昌水の「訂正増訳采覧異言」と言う書を紹介する。ここには世界各国の情勢が示され、「ヨーロッパが自らの繁栄のために、他の大陸を利用し、収奪する構図」が描かれていると言う。本書は幕府の蔵書となり、以後のヨーロッパ接近を予測し得る視覚を、幕府が獲得したと説く。
第7章 辻本雅史氏の「教育社会の成立」では、全国に学問塾(いわゆる私塾)と郷学(いわゆる寺子屋)が自生的に作られ、維新後の学校制度の基礎になったと説く。「近世に成立した教育社会は、近代学校浸透の前提をなしていた」と言う。
知の集積や様々な営みがなされ、変化への対応の礎になるということは、すごいことだと思う。それは、現代でも同じことであろう。
第4章 田中誠二氏の「藩財政改革論」では、萩藩が藩財政をどのように運営していたかを説く。関ヶ原の戦いにより、領地を大幅削減されたにも関わらず、多くの家臣はそのまま維持されたので、財政が大変厳しかったと言う。私の読解だと、「税強化」「支出削減(すぐに揺り戻しが来るが)」「藩の債務免除」しかやっていないように理解した。
きっと、新田開発・産業振興もやっていたのではないかと思うが、いずれにせよ、悩みは現代も江戸時代も同じということだろう。