ソクラテスは頑固な屁理屈親父

ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)

ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)

本書前半の「ソクラテスの弁明」では、ソクラテスは、ああ言えばこう言い、人の上げ足をとって矛盾をさらけだす等をするだけという印象である。ロジックを鍛えるために本書を勧める本があったが、ソクラテスの態度を私は好きになれない。ソクラテスだけがこうだったのか、あるいは西洋哲学の考え方として、今の時代にも息づいているのか。後者だとすると、私は世界では戦えないのだろう。


愛智者として生き自己ならびに他人を吟味することを、死もしくはその他の危険の恐怖のために抛棄したとすれば、私の行動は奇怪しごくというべきであろう。

ただし、上記引用のとおり、智を愛するという気持ちは、ものすごいものであり、尊重すべきであろう。



また、本書後半の「クリトン」では、脱獄の勧めを拒否するのは、頑固ではあるが、首尾一貫していると言える。その解説は、山岡龍一氏の「西洋政治理論の伝統」より引用させて頂く。

法体系があるおかげでわたしたちは、さまざまな権利を守られるという仕方で、利益を享受することができます。端的に言えば、自由になれるのです。このような自由は、その法体系に属するメンバーが、その法に従うことで、保障されます。

ポリスの決定に対する、いわば絶対的な服従を説くソクラテスの主張が、自由の論理に基礎づけられている

文字通り、命を賭けて自由を守ったということだろう。その「自由」に内容は、現在のそれとは違うものだろうが。

西洋政治理論の伝統 (放送大学教材)

西洋政治理論の伝統 (放送大学教材)