戦間期の家族と女性

近現代3 (岩波講座 日本歴史 第17巻)

近現代3 (岩波講座 日本歴史 第17巻)

本書第4章は、小野沢あかね氏執筆の標題論考である。

男は外で仕事・女は家庭を守るという、性別役割分担は、戦間期に少しずつ形成されてきたが、当初は多数派でなかった。さらには、戦後高度成長期ですら、「生産労働の場から撤退しない慣習とメンタリティが女性たちに持続し続けていた」と述べる。

戦間期には(アラン注:新中間層において)性別役割分担家族が一部で形成されており、・・・しかし一方で農家をはじめとする「小経営」の「家」では、女性、とくに戸主の妻は生産労働の重要な担い手であり、自分の子どもを育てることも常態化してはいなかった。・・・雇用労働の場においては、「家族賃金」という発想は登場してはいたが、経営の側においても労働者の側においても、女性労働者が結婚後に専業主婦になるという規範と実態は未だ成立してはいなかった。

女性がつらい境遇におかれる中、女性の側からも、母性を根拠に批判が述べられたと述べる。

「家」に没落の危機をもたらしかねない男性たちの飲酒や買春に対する批判という形で、自らの労働への自負心に支えられた女性たちの異議申し立てが表出しはじめた。・・・1930年代の農村経済更生活動で重視された母親としての、家庭運営の担い手としての女性の役割は、女性たちの自負心を喚起したといえる。

性別役割分担は、日本古来の文化に由来するものではなく、歴史的に形成されてきたものである。役割分担の議論をするならば、その形成過程を踏まえる必要があると感じた一方で、決して変化しないものでもないと、改めて感じた。また、昨今、「女性活躍促進」の掛け声かかけられているが、その「活躍」の内容を端的に言うと、「女性管理職3割」なのだろう。議論が拡散し、何も変わらないということは避けなければならないが、何が「活躍」なのかということも、もっと深く議論する必要があるだろうと感じた。