奈良律令国家の職能給・職務給

古代3 (岩波講座 日本歴史 第3巻)

古代3 (岩波講座 日本歴史 第3巻)

本書第3章は、大隅清陽氏執筆の「律令官僚制と天皇」である。ここには、人事担当者にとって興味深い記述が出てくる。

五位以上の官人(は)・・・天皇と近しく接しうる臣下として一体的把握される・・・五位以上の官人には、位階(=職能資格)に対して位田・封土・位録・資人などが支給され・・・ていた。これに対し、六位以下の場合、その唯一の給与である季録が、在任している職事官の相当位(=職務)に応じて支払われる・・・。

一定以上の層、すなわち貴族は職能給、一定以下の層は職務給ということだ。

六位以下官人の源流である旧「伴造」層は、元来は王族や(五位以上を構成することになった)マヘツキミ層に個別に従属し・・・ていた。令制下のウヂは官人の出身母体に変化しており、かつてのウヂ相互の関係は、位階・職階による官人相互間の上下関係に切り替えられている。・・・
しかし実際には、官司内において、単なる職階上の上下関係だけでなく、五位以上の貴族と六位以下官人との間で私的な結びつきが生まれることもあった。

奈良朝廷は、貴族が私的に上下関係をつくることを警戒し、天皇・朝廷が一律人事支配することを狙ったが、必ずしもうまくいかなかったということだ。他にも色々な要素があっただろうが、人事制度にスポットをあてると、日本的経営よろしく、あらゆる層に対し職能給を導入したほうが、朝廷(=本社人事部)が中央管理しやすかったのではないかと思う。職務給は、各職場が人事権を持つシステムと整合性があるだろう。このあたり、奈良朝廷メンバーが、hamachan先生あたりの本を読んで勉強していればよかったのになあ、と思う。あるいは、そんなことは百も承知で、貴族の抵抗で、六位以下には職能給を導入できなかったのかもしれないが。
この情勢が、平安時代になると変わったのか変わらなかったのか、次号以降が楽しみである。