「サラリーマンは、二度会社をやめる。」楠木新著

会社生活の前半・後半それぞれの振舞い方について述べる。前半について、石の上にも三年、一人前になるには十年ということで、自分らしさとか個性という以前に、まずは会社にどっぷりつかり、与えられた仕事をハードにこなせば、成長できると言う。後半(40歳以降)は、会社との距離感を考え、「会社員のまま2つの自分を持つ」ことを勧める。著者も、生保会社に勤めつつ、「楠木新」というペンネームで諸活動をなさっているのだ。

「前半」について、自分の経験(人事担当者として&一個人として)も、また大久保幸夫氏が「キャリア前半は筏下り」と言ったり、藤本篤志氏が「社畜のススメ」と言ったりしていることからも、こういうことなのだろうと思うし、実感にあう。しかし、この年代の人たちは、この題名の本は手に取らないかもしれないが。
「後半」について、自分はまさにその年代である。こうやってブログを書いているのも、同じ考え方からなのだろう。一方で、会社として従業員にこういう振る舞いを求めることが、プラスかマイナスか分からない。「たとえ降りても、組織の仕事は全力でする・・・会社での仕事の質を落とすと、自分のやりたいことの質も劣化する」とあり、個人個人にとっては、勿論、会社にとってもプラスなのかもしれない。
さらに「前半」「後半」に共通して指摘したいのは、本書が完全に、年齢・勤続年数とキャリアが連動する前提に書かれていることだ。日本型雇用を前提にしている。この前提自体が変化する/させる場合、議論が異なってくることに留意が必要だ。この日本型雇用が続く限り、人事担当者にとって、そしてあらゆる年代の働く人たちにとって得るものがある本だろう。