「人生の意味の心理学」A・アドラー著、高尾利数訳

人生の意味の心理学

人生の意味の心理学


人々はそれぞれの「人生のスタイル」を持つ。遺伝というより、家庭環境により、5才くらいまでに確立される。「人生のスタイル」に矛盾しない、一貫した言動をとる。その言動とは、社会的によい行為であったり、犯罪行為であったり、ひきこもりだったりする。それは「人生のスタイル」にマッチする行為だと言う。

人生とは仲間の人間に関心を持つこと、全体の一部となること、人類の福利にできるだけ貢献すること

これはまさに大乗仏教である。

われわれは、彼の目を開かせ、彼の人生のスタイルを続けるのに熱心でないようにさせなければならない。格言が「相手のスープのなかにつばをする」(相手が好ましいを思っているものを、そうでないものにすること。訳注)というようにしなければならないのだ。

「人生のスタイル」は強固なものだが、変えられるものでもあるという点に救いがある。「7つの習慣」ではミッションステートメントを作成することで、「認知行動療法」では、自動思考に気付き、認知の歪みを発見することで、これを実現しようとしているのだろう。本書のほうが、直接的なやりかただが。

神経症の徴候はすべて、自己の優越感を低めることなしに、人生の諸問題を解決するのを拒否しようとする正当化の手段である。

これだけ読むと、とても厳しい文章だが、「嫌われる勇気」を読めば、「自己の優越感」は、他者からの承認ではないということが分かる。

貧しい家庭では、子供たちの準備はそれほどよくできていない。両親たちが、あまりにも多くの困難に直面していて、子供たちの準備をするために多くの時間を用いることができないし、おそらく彼ら自身十分教育を受けていないので、子供たちを助けることもできないのであろう。・・・よく訓練された教師なら、準備不足を訂正していく方法を知っているであろうし、子供たちは、準備がもっとよくできている者たちとの交わりから得るものが大きいであろう。

先日、家庭の経済状況と子供の学力が相関関係にあることが話題になっていたが、後天的な問題であるということであり、教育制度によって解決できるという点で、朗報である。

本書は、読み方によっては、劇薬になると思う一方で、考えさせられることの多い本であった。「嫌われる勇気」を読んでから、本書を読んで、よかったと思った。