「日本的霊性」鈴木大拙

日本的霊性 (岩波文庫)

日本的霊性 (岩波文庫)

霊性」とは、物質と精神の二元論を超え、2つが1つで、1つでそのまま2つであるというもの。日本的霊性の最も純粋な姿は、浄土系思想と禅である。両者とも鎌倉時代に花開いたが、それはこれまでの貴族とは異なり、大地に根を持つ武士と農民に根差すものだったからだ。本書では、そのうち浄土系思想に関し、法然親鸞の思想、及び「妙好人」である赤尾の道宗及び浅原才一の生涯について語られる。ひたすら念仏を唱えることで、自分が阿弥陀仏であり、阿弥陀仏が自分であることに目覚める(「個己である自分を捨て、超個己の霊性に目覚める」)と言う。以上が、アランによる本書の理解である。

科学の発展が凄まじく、人間のこころが追い付かず、様々な場面で矛盾が生じていると思う。NHKのNEXT WORLDとかを見ていると、未来はさらにその矛盾が加速しそうだと感じる。そういう時代だからこそ、宇宙と自分を一体と見る考え方(=アランによる日本的霊性の理解)が、世界にとって重要になると考える。これは決して、日本の国力向上のような意味では言っていない。本当に、万人の幸せのために、日本的霊性が重要だと思うのである。