「人工知能は人間を超えるか」松尾豊著


この本は、これまで読んだAI本の中で、最も分かりやすかった。最初に読めばよかったと後悔したくらいである。
本書の要旨は、最終章のP.253に書かれている。

人工知能の60年に及ぶ研究で、いくつもの難問にぶつかってきたが、それらは「特徴表現の獲得」という問題に集約できること。そして、その問題がディープラーニングという特徴表現学習の方法によって、一部、解かれつつあること。特徴表現学習の研究が進めば、いままでの人工知能の研究成果をあわせて、高い認識能力や予測能力、行動能力、概念獲得能力、言語能力を持つ知能が実現する可能性があること。知能と生命が別の話であり、人工知能が暴走し人類を脅かす未来はこないこと。それより、軍事応用や産業上の独占などのほうが脅威であること。そして、日本には、技術と人材の土台があり、勝てるチャンスがあること。


いままでの人工知能の歴史がわかりやすくまとめられている。
次に、「人工知能が暴走し人類を脅かす未来はこないこと」について、いくつかのシナリオを思考実験したうえで、ありえないと結論づける。他書と異なり、具体的なシナリオが描かれているので、とても分かりやすい。
そして、「産業上の独占」について、日本の課題と強みが述べられている。


「産業上の独占」について、何とかしないといけない。人工知能は、あらゆる人が関心を持ち、自分ごととして関与していく必要があると、強く思う。以前、日本のPCメーカーがインテルマイクロソフト連合に苦労したのとは、桁の違う脅威が訪れつつあると思う。避けるべき未来は、人工知能が人間を支配する未来でなく、人間が人間を支配する未来である。