「室町時代の一皇族の生涯 看聞日記の世界」横井清著

室町時代の一皇族の生涯 『看聞日記』の世界 (講談社学術文庫)

室町時代の一皇族の生涯 『看聞日記』の世界 (講談社学術文庫)

伏見宮貞成親王(以下、親王)の記した「看聞日記」を読み解く。親王の血統は、長らく皇位から遠ざかっていたが、曲折の末、息子が天皇に(後花園天皇)、親王自身が太上天皇(後崇徳院)となるに至る生涯を描く。皇位太上天皇への、強い思いを感じた。

当時の中央政治から、荘園経営、そして様々な文化に至るまで、室町幕府絶頂期当時の状況がよく分かる。本日記から派生する研究対象は、無数にあるだろう。

本日記は、細部について書かれているが、後花園天皇即位後は、記述が格段に減る。天皇の実父ということで、多忙となった、あるいは神経を使うようになったことで、日記を書く余裕がなくなったのだろうか。

本書は絶版となっているようで、図書館で借りて読んだ。復刊を願う次第である。