『「正法眼蔵」講義』 竹村牧男著

『正法眼蔵』講義―現成公案・摩訶般若波羅蜜

『正法眼蔵』講義―現成公案・摩訶般若波羅蜜

宗教学者の竹村氏が、曹洞宗の青松寺で講義した内容をまとめたもの。本書は、正法眼蔵のうち、現成公案及び摩訶般若波羅蜜の巻を紹介している。

本書を読んで、私が理解したのは、「主客は分離しておらず、一体である。宇宙とあなたは一体である。しかし、個々の存在が全体に吸収されてしまっているというわけではなく、個々人はそれぞれかけがえのない存在である。」ということだ。全体主義でもなく、個人主義でもなく、かげがえのない個々の存在が、思いやりを持つことで、よりよい世界を作っていこうということと理解した。

この理解で正しいかの、分からない。正しいとして、道元の考えなのか、著者の竹村氏の考えなのかも分からない。正法眼蔵そのものを繰り返し読み、様々な経験をし、思索を深め、道元ならばひたすら坐禅をすることで、体得できるのだろう。いずれにせよ、竹村先生の解説なしには難しいではあろうが、正法眼蔵そのものの読破に、チャレンジしてみようと思った。

摩訶般若波羅蜜の巻で紹介されている美しい漢詩を。風鈴を描いている。道元の師、如浄禅師の詩である。
  渾身口に似て虚空に掛り、東西南北の風を問はず、
  一等他と般若を断ず、滴丁東了滴丁東。
「宝慶記」で道元が本詩をべたぼめしていることにつき、竹村氏はやり過ぎではと言っているが、私は、本当に美しい詩だと思った。