日経記事「あすへの話題 鈴木正三の世界」について

昨日日経夕刊に、弁護士・元検事総長但木敬一氏の標記記事が載っていた。
完全失業率と犯罪発生件数との関係がこれほど緊密なのは日本だけである」として、具体的な数字をあげて説明する。そして、次のように述べる。

日本人にとって労働は心の安定をもたらす魔法の杖である。物づくりの中核となっている製造労働者の増大は日本人のマインドに絶大な効果をもたらすであろう。400年前、関ヶ原の戦いで戦功を立て、卒然と禅僧になった鈴木正三が唱導したように、日本人にとって労働は宗教的行為に近いものなのかもしれない。

ここで、まず「???」となった。完全失業率が上がれば、収入が増えたり安定したりするので、犯罪発生率が下がり、その逆も同様ということではないのか。


そこで、鈴木正三について触れらている一書より。

このような「本来空」の境地を体得するためには、僧侶の場合は坐禅に励む必要があるが、正三において特徴的なのは、出家していない俗人の場合、世俗の職業生活に励むことが修行になり、それによって成仏可能であると強調した点である。これを「世法即仏法」という。

たとえば、正三は「万民徳用」において、次のように述べる。

どのような行いもみな仏用である。人々はみなそれぞれの営みをなし、その営みにおいて成仏するのである。一切の営為は、皆、世界のために行うのであるということをわきまえよ。仏としての身をもち、「仏性(仏としての本性)がそなわっている人間が、その心がけを悪化させて、自分から悪道に入ってはならない。根源的な真理としての一つの仏が、百億に分身して、世界の役に立っているのである。職人がいなければ、世で用いる道具を調達することができない。武士がいないなら世の秩序がおさまらない。農民がいなければ、世の人々が食べる食糧がなくなってしまう。商人がいないならば自由な物流が成り立たない。この他、あらゆる仕事があってすべて世の役に立っている。

思わず、ジョージアの宣伝「世界は誰かの仕事でできている」を思い出す。

これらの話は、何も「雇用されていること」に限られるのではなく、自営業も、家事労働も、社会貢献も、普段のちょっとした親切にもあてはまることだろう。日本人のこの考え方は、よいことでもあるし、悪いことでもあろう。やりがいを持って自分の仕事に尽くすことが大事である。一方で、どういう状況になっても、心の平穏を保てる、強い心を持てるようになりたい、と感じた。