「会社はこれからどうなるのか」岩井克人著

会社はこれからどうなるのか (平凡社ライブラリー)

会社はこれからどうなるのか (平凡社ライブラリー)

会社は、アメリカのように、株主が大きな権利を持つのが、あるべき形式・理想形だということを、ロジカルに否定する。これを「法人名目説」と整理する。高度成長期日本の会社を、「法人実在説」と整理し、どちらの形式も、会社という性質上、存在しても、全くおかしくないことを解き明かす。そして、後者の形態は、産業資本主義にマッチしており、日本は高度成長期に、まさに大きな成長を享受する。しかし、ポスト産業資本主義(グローバル化・IT化・金融革命)において、日本の会社は機能不全を起こしており、シリコンバレー型の企業が望ましいとする。

アメリカの会社があるべき姿だ」「いや、日本の会社のほうがよい」といった不毛な議論をせず、相対的に物事を見ているところがおもしろい。非常にロジカルで読みやすい。一方で、日本の会社が機能不全を起こしているとしつつ、ポスト産業資本で求められる会社の姿と、日本の会社とが、どのように違うのかが、よく理解できなかった。これは私の今後の勉強課題である。

また、資本主義とは差異から利益を得るところに本質があり、ポスト産業資本主義のもとでは、会社・個人の持つ情報でしか、差異をつけられないと言う。この点も、そのとりだと思う一方で、次から次へと新しいことを考えないといけないし、めまぐるしく変わる環境に対応しないといけないし、とても疲労感のつのる社会になるだろうとも感じた(既になっているかもしれないが)。