「観無量寿経」 佐藤春夫訳・注、石田充之解説

法事でよく耳にするお経だが、佐藤春夫の美しい訳を読むと、「こういうストーリーがあったのか」と驚きである。

前半は、息子が父王と母親を裏切り、その母親が釈迦に救いを求めるストーリー、後半は、釈迦に救われた母親の願いを聞き入れ、万民が救われる方法を釈迦が説くシーンである。

後半部分について、天台宗のように観察経典として解釈すべきか、浄土系のように称名念仏として解釈すべきかは、何とも言えなかった。しかし重要なことは、お経は、法事で読み上げられるためのつくられたのではなく、心の救いを求める人たちが、長い年月をかけて、つくりあげ、受け継いできたということだ。法事で読み上げられるのを聞くだけでは、誠に勿体ないと感じた。