「21世紀の資本」トマ・ピケティ
- 作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2014/12/06
- メディア: 単行本
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まずもって分析力、及び分析にかけたであろう労力に脱帽である。また、歴史的視野に立ち、数百年単位、場合によっては千年を超える単位で考察しているところが素晴らしい。そして、資本や所得の格差の縮小、及びそれをもたらした大きな原因の一つである累進税制の導入は、2つの大戦によるショックを経なければできなかったと言う。経済学が「社会科学の下位分野だと思っており、歴史学、社会学、人類学、政治学と並ぶものと考えている」と述べ、様々な分野、とりわけ政治学との連携を主張する。
以上については、全面的に賛成である。いくつか感じたことを書く。
本書は日本についてはほとんど触れられていない。なので、日本のことを議論する場合、本書は思考のフレームワークを提供してくれるが、実際に議論する場合は、著者と同じ労力をかけた分析をしないとならないだろう。
また、私の読解力の問題かもしれないが、個人間の格差のみを分析しているのか、企業等の団体もあわせて分析しているのか、分かりづらいことがあった。
そして、処方箋として、世界的な資本税の導入を主張するが、それが正解かは分からなかった。もし正解でなかったとしても、著者の分析の価値を減ずるものではないので、本書内容を全否定してはならないだろう。
いずれにせよ、幅広い範囲で分析・考察がなされているので、本書内容に関する議論も、幅広い分野でなされ、よりよい世の中づくりにつながることを期待したい。(もちろん、私自身も研鑽を積み、微力ながら貢献していきたい)