「働かないオジサンになる人ならない人」楠木新著

著者の他書に書かれていることのおさらいという面も強い本だが、とくになるほど!と思った点を紹介する。

20代社員は、85%が「会社人間型」だが、50代社員は、70%が「組織組み込み型」になると言う。新卒採用時は、「周囲の同僚と協調しながら、イキイキと仕事に取り組んでくれる学生の採用」を目指すが、採用ミス分を考慮し、会社人間型は85%と言う。ところが、50代になると、出世競争に敗れ、「会社の仕事には、もはや意味を感じていないものの、自分が打ち込めることがほかにはないので、時間も労力も会社の仕事に投入している。組織の中の立場が重要なので、周囲からの評価にも敏感」という状態になってしまうと言う。
なぜそうなるか言うと、他書にもあるように、大量採用により大量に同期ができるが、課長、次長、部長・・・と上に行くにつれポストが足りず、ピラミッドから押し出された人が働かないオジサンになるということだ。

前半部分については、完全に同意する。まさにメンバーシップ型のメリットとデメリットが、若手時代とベテラン時代に現れているわけだ。会社にとっても、労働者にとっても、どう対応すべきかが、大きな課題である。後半部分についてもおおむね同意するが、問題はもっと深刻だと思う。一昔前の新卒採用抑制により、若手が少ないため、中堅・ベテランとなっても、課長等のポストに就くことができないのみならず、昔なら若手がこなしていたピラミッドの下の仕事をせざるをえなくなっていると思う。そのために給料が上がらなくなっても不幸だし、給料が上がったとしても、それまた不幸だろう。なぜなら、前半部分の「組織組み込み型」が、さらに増えているのではないかと思うからである。

本書の後半部分では、転職・独立等をするのでなく、会社勤めを継続しながら、どうすれば「働かないオジサン」にならないかを述べており、人事担当者・中高年者(+それに近い人)双方にとって意味がある本だと思う。