「日本近代史」坂野潤治著
- 作者: 坂野潤治
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/03/01
- メディア: 新書
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幕末は、西郷隆盛を中心に、開国・攘夷を超えた、合従連衡の成否が鍵だったこと、明治初期は「富国」「強兵」「公議(憲法)」「輿論(議会)」それぞれの主張が絡み合って動いていたこと、第一次大戦前後は「普通選挙」「二大政党制」への再編と抵抗の歴史だったことを述べる。
しかし、私にとって一番印象に残ったのは、昭和以降の記述である。
筆者には、政治社会に一種の液状化が生じていたように思われる。陸軍も政党も官僚もそれぞれの内部に分裂が生じており、政治勢力というものが細分化されていた。細分化されたいくつかの勢力を寄せ集めて一時的に多数派を形成することはできても、中期的に安定した政権をつくることは、困難になってきたのである。
1935年の日本政治は、政界の不安定化とエリートの質の低下に直面していたのである。
「崩壊の時代」に入っていった最大の原因は、すでに国内の指導勢力が四分五裂していて、対外関係を制御できなくなっていたからである。
現在の政治も同じ状況ではないかと感じてしまう。なぜこのような状態になったと著者が見ているのか、まさに現在の日本にとって重要と思うが、私の読解力では読み取れなかった。引き続き考えていきたいと思う。
そして、「2011年3月11日は、日中戦争が勃発した1937年7月7日の方に近く見える」と危惧を述べる一方で、次のようにも述べ、希望も示している。
「亡」を克服して「興」に向かう次の指導者たちは、政界、官界、財界、労働界、言論界、そして学会の中で、出番を待っているものと思われる。
多くの人たちが(私も含めて)、切磋琢磨し、英知を結集し、行動することで、同じ過ちを繰り返さないようにすべきと思った。
また、坂野氏の本は、気になっていながら読んだことがなかったが、これ程読み甲斐があるとは思わなかった。坂野氏の他の本も読んでいきたいと思う。