「自分メディアはこう作る!」ちきりん著 日本型雇用について
- 作者: ちきりん
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/11/22
- メディア: 単行本
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大変読みやすく、かつ色々なことを考えさせられる本。前半では、著者のブログが、大人気ブログに育った経緯が書かれ、後半には、そのブログのいくつかのエントリが紹介されている。
今回は、その後半で紹介されたエントリから1つ紹介する。 http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100914
労働者は、以下4つに分かれると言う。
(1)システムを構想する人(システムより上に位置する)
(2)構想されたシステムに必要となる、機能パーツを設計する人
(3)設計された各機能パーツを製作する人
(4)システムに沿って働く人(システムの下に位置する)
そして、以前「年功序列」が機能していた時代には、新入社員はまず(4)の仕事をやり、だんだんと(3)の仕事、(2)の仕事とステップアップしていったが、今やそれがかなわなくなったと言う。
この構造は、まさに日本型雇用/メンバーシップ型に突きつけられている課題に他ならない。
楠木新氏が「働かないオジサンの給料はなぜ高いのか」では、新卒採用により大量の同期社員を生みだすのに、組織はピラミッド型であり、低成長下で組織が拡大していかないので、昇進できる人が限られると言うが、上記のちきりんさんのコメントと全く同じことだ。
また、中野円佳氏が「育休世代のジレンマ」で、苦労して、会社の仕事と、家事・育児と両立しても、そもそも会社の仕事が、「そこまでしてやる仕事か」と悩む女性が多いと言う。これも、両立に苦労しながら、上記の「(4)システムに沿って働く(システムの下に位置する)」をやり続けて、何の意味があるのかしら?という悩みだろう。
この問題が悩ましいのは、「(4)システムに沿って働く人(システムの下に位置する)」がいないと、組織は成り立たないし、地道な(4)の仕事を経験することが、人材育成につながることである。労務屋さんは、「強いチームはボールのないところ(アラン注:皆から注目されないところ)でのプレーに優れている」と、強いアメフトチームの例をあげ、強い組織は、目立たない部分にこそ強みがあることを説く。 http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20140918#p1
また、本年8月6日付け日経夕刊の「あすへの話題」欄で安藤裕康氏が、以下のことを述べているが、本当にそのとおりだと思う。
・一見つまらなそうな仕事でも何年も辛抱強く続けて初めて一流になるのが日本の職人芸。
・日本の素晴らしさは、そういう職人芸が様々な分野で社会を支えていること。
・日本製品の成功も、すべてそういう職人芸に支えられNてきた。
私の勤務先のある役員は、「若い頃に無数の伝票処理をしたので、今では、不自然な伝票は、一目で分かる」と言っていた。
やはり、日本型雇用/メンバーシップ型を、微修正しつつ維持するのか、抜本的に見直すのかが、問われている。