「律」に学ぶ生き方の智慧 / 佐々木閑氏

「律」に学ぶ生き方の智慧 (新潮選書)

「律」に学ぶ生き方の智慧 (新潮選書)

出家者が集まる組織「サンガ」の、特有の規則である「律」について述べる。
出家者たちはサンガに集まる。生きるための生産活動は行わず、托鉢のみに頼る。
「彼らにお布施してあげよう」と思われるように、自分たちを律するものが「律」である。

出家とは、「一般社会の価値観に満足できない人がそこを離れて、全く別の価値観で運営されている組織の中に飛び込んでいく」、
そういう行為をさす大勢の、しかもいろいろな個性を持った人が集まったサンガという組織を一つにまとめ、
「仕事一切せず、仏道修行という非生産的な生活だけやり続け、それでいて社会から尊敬される状態で反映させる」という
恐ろしく困難な状態を維持してきた律の機能


サンガ組織は、「社会に受け入れられないと成り立たない」「先輩が後輩を指導」「完全な年功序列(法臘)」「(組織内の行動のみならず)日常のすべてが評価される」といった特徴を持つ。
本書は、世俗から離れ、修業に集中したい人たちが集まることを述べているので、著者の意図からは外れるだろうが、日本の企業の説明そのものであると感じた。企業組織論としても読めると思う。
本書では、宗教思想面では同じでも、世の中に受け入れられず、信者たちを幸せにしないということで、某新興宗教の例を挙げている。全く同じことが、ブラック企業にも言えるだろう。サンガと企業は、目的は全く異なるが、世の中に受け入れられて初めて成り立つという点で、相通ずるものがあると思う。