「禅と日本文化」鈴木大拙著、北川桃雄訳

禅の基本的考え方を手際よくまとめた上で、美術・武士・剣道・儒教・茶道・俳句といった、日本文化に与えた影響が、分かりやすく述べられている。むしろ、禅は日本文化の一部となっていることがよく分かる。

禅と日本文化 (岩波新書)

禅と日本文化 (岩波新書)

さらに私は、日本型雇用と禅は親和性があると感じた。以下文章を読むと、背中を見て覚えろ、技術は盗め、仕事を通じて成長するといった、OJT/日本型雇用の育成法そのものを、禅は伝えていると感じる。「禅の鍛練法・・・真理がどんなものであろうと、身をもって体験することであり、知的作用や体系的な学説に訴えぬ」「教育者の義務は、その生徒のもつ最も貴重なものを育て上げるために、あらゆる機会を与えることだ。」

また、「禅と武士」に1章を割いているように、武士は禅を大変好んだ。「合理・非合理いかなる結論にせよ、人がそれに達したものをもって突進することを説いた」とあるが、現代の企業戦士たるビジネスパーソンたちに贈る言葉といっても過言ない。高度成長期、やるべきことがクリアであるなら、物凄い強みを発揮することであろう。

私の思索はどんどん進み、西洋的合理主義・二元論と職務主義とが結びつき、禅の精神・自他の一体性と職能主義が、歴史的にも結びついているのではないかという仮説に至った。しかし、「その直覚的な教えが妨げられぬ限り、いかなる哲学にも道徳論にも、応用自在の弾力性を持っていて」とある。つまり、禅そのものには何か主張するものはないということだ。禅と、日本の企業戦士や職能主義と結びつけるのは、誤りかもしれない。今後思索を進めていこうと思う。