『希望格差社会』山田昌弘著 筑摩書房
山田 昌弘著
「職業世界」「家族生活」「教育」の3つの視点から分析していく手法は見事であり、見事すぎて読んでいて気分が暗くなっていくにもかかわらず、本にぐんぐん引き込まれていった。一方で、分析内容は抽象的な嫌いがある。例えば、「近年は、結婚した夫婦でも子どもの数が落ちているという結果がでている」という記述があるが、根拠がはっきりしない。文藝春秋12月号の「少子高齢化大論争」では「2002年の数字ですが、結婚してから15〜19年経った夫婦の平均出生児数は2.33人で、72年とほとんど変わらない水準を保っています」とある。著者が「子どもの数が落ちている」と言うのは、2003年以降の数の話をしているのか、若い夫婦の取り上げて言っているのか、明確にならないと信頼性に欠けてしまう。ただし、データを羅列して一般の読者にとって読みづらくなることを避け、文章力とストーリーの明快さにより、問題の深刻さを読者に印象付けることが、この本の趣旨にかなっていると思うので、特に問題ではないということを強調しておきたい。