『教養のすすめ』岡崎久彦著

教養のすすめ

教養のすすめ

「明治の人はいかに偉かったか」を書こうとしたことを発端に、西郷隆盛勝海舟福沢諭吉陸奥宗光安岡正篤という5人の人物を掘り下げる。それぞれ大きな業績を残しただけでなく、和漢洋の学問に精通していた人物ばかりである。そして「こういう、われわれが逆立ちしても及ばないと思う人々は、それぞれの人生のなかで、一度だけでなく、何度か、二、三年あるいはもっと長い期間にわたって死に物狂いの・・・捨て身の勉強や修行をしているということです。」と説く。その中で、陸奥宗光の例をあげると、人生で3回勉強に打ち込んだ話とともに、そのうち3回目として、41〜3歳の時に欧米外遊した際、毎日10時間学問に打ち込み、当時の駐ウイーン大使の西園寺公望を驚嘆させたという話が紹介されている。ここには記さないが、その他の人たちの勉学・修行もすさまじものがあることが分かる。
著者は、明治の人が偉くて、日本を敗戦に追い込んだ昭和初期の人は偉くないということではなく、むしろ江戸時代〜明治〜戦前と戦後の間に大きな断絶があると言う。そして国民全体が努力次第でエリートになれる時代の復活が必要と説く。
 私など、一応このように書評らしいものを書いているものの、読書量・知識ともまったく少なく、本書を読んでいて大変恥ずかしくなった。一方で、刻苦勉励していこうと身を引き締められた次第である。