「高品質日本の起源」小池和男著


日本企業の国際競争力の源泉は高品質にあり、その高品質は職場の発言に支えられており、発言する職場は1920年代からあると主張する。その論拠として、品質への発言、定期昇給制の出現・確立、労働組合の3つの指標をあげ、本書の構成もそれに応じて3部構成となっている。
 3つの指標のうち、定期昇給制と労働組合に関する論拠は、誠に説得力があると感じた。一方、品質への発言について、繊維産業に関するきめ細かい分析が展開されている。戦前の職場第一線での従業員の発言状況を論証するということが、いかに困難かは、容易に想像できるものの、やはり説得力のある論拠は提示でいていないと思う。しかし、だからといって本書の価値を落とすものではない。むしろ、日本企業の強みをきっちり認識することで、国際競争力を維持・拡大していかなければならないことを、改めて感じた。
 また、本旨からは外れるかもしれないが、第Ⅲ部の労働組合について、総同盟の果した役割についての記述は、大変説得力があるし、著者の強い思いに、迫力すら感じた。